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北朝鮮のミサイル発射問題 | 米朝戦争の可能性と日本での被害想定

2017年12月05日 11:55

nuclear.jpg






2017年11月29日に、北朝鮮が火星15という新型の弾道ミサイル発射実験を行い、それに伴って北朝鮮情勢が再びクローズアップされております。






今回の発射は、アメリカをターゲットとしたミサイルの実験であり、アメリカでもマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)が2日に「北朝鮮との戦争の可能性が日々高まっている。残された時間はほとんどない」と警告したのに続き、リンゼー・グラハム上院議員は3日(現地時間)、「在韓米軍の家族の撤収を始める時だ。議会も先制戦争を議論しなければいけない」と主張する等、緊張感が高まっております(出典:中央日報日本語版12/5






このことについて、そもそも背景として何故北朝鮮が核ミサイルの開発を進めるのかを説明し、次に今回のミサイル発射がどういう意味を持つのかということを北朝鮮の立場から分析し、今後戦争になる可能性はあるのか、仮に戦争になったとして日本への被害はどうなるかを分析し、最後に今後の為替への影響も分析したいと思います。






北朝鮮は何故核ミサイル開発を強硬に進めるのか








まず、そもそも何故北朝鮮が核・ミサイル開発を進めるかというと、それは核ミサイルがアメリカに対抗する唯一の手段であり、それがなければ攻撃されると考えているためです。






北朝鮮は、韓国と停戦状態とはいえ戦争状態にあり、その同盟国でもあるアメリカからは何度も制裁を食らっていることや、また、中東諸国でアメリカが何度も戦争を行っていることから、「アメリカから攻撃されるかもしれない」ということを常に警戒しております。






では、それをどうやって防ぐかというと、大きく2パターンあり、1つは平和的な方針で攻撃される理由をなくすこと、もう1つは攻撃されたら重大な反撃を行うとして攻撃をためらわせることが考えられますが、ご存知のように、北朝鮮は基本的に後者を選んでおります。






そのためには、アメリカに対して「攻撃された時に重大な反撃が可能」ということ、つまり「やろうと思ったらアメリカに大打撃を与える手段がある」ということが必要なのですが、そのためには、北朝鮮にとって核ミサイルというのが唯一の選択肢となっております。






北朝鮮人民軍は、韓国と陸続きであるため、陸軍にもっとも力を入れております。北朝鮮軍の総兵力は防衛白書によると120万人程度で、シンクタンク・国防戦略研究所によると、その内102万人は陸軍所属とされており、世界有数の兵力となります。ただし、資金難であるため、戦車等の装備については旧式のものがほとんどであると言われております。(出典:BUSINESS INSIDER






陸軍でさえこの状況であることからも分かるように、空軍・海軍については装備・人員ともに不足しており、アメリカに対して、海を越えて攻撃を仕掛けるのは局地的に特殊部隊のテロ、散発的な攻撃を加えるということくらいしかできず、「戦争に勝つくらいの攻撃を加える」ことは、海軍・空軍力からはほぼ不可能なことと考えられています。






このように、アメリカに制海・制空権を取って攻め込むことは現実的ではないのですが、それでも唯一戦略的に大打撃を与えられる方法があり、それがまさに「核ミサイル」です。






核兵器は強力であり、20ktの核兵器では、爆風により全壊1.7km、火災2.0km、致命的な放射線1.4km、ICBMに積むことのできる最大級の20MTのものともなると、爆風により全壊6.4km、火災30km、致命的な放射線4.7kmと、都心部がほぼ壊滅状態になるくらいの威力があります。なお、今回の核実験では、様々な説がありますが、50ktから100kt程度の規模のものと考えられており、いずれにしても爆風により全壊1.7km、火災2.0km、致命的な放射線1.4kmという20ktのものより大規模なものと考えられております。






このように、核兵器は非常に強力なものなのですが、核攻撃をしようとした場合には、ミサイル以外の例えば航空機からの投下という方法は、北朝鮮の航空能力(装備・練度)を考えるとほぼ確実に迎撃されるため、ミサイル以外で安定的・持続可能な核攻撃を行うことは困難です(一か八かでやることはありえても、冷静に戦争として計算できる戦力ではないという意味です)






一方で、核を積まない通常弾頭のミサイルでは、1tの通常弾頭でも、爆風殺傷半径 20m以内即死、50m以上で安全、破片殺傷半径 150m以内即死、500m以上で安全、建造物については半径40m以内で倒壊、80mまで半壊、160m以上安全というように、戦略レベルでは何百発も打つことを前提としたものであり、その中でもアメリカに届くものを戦争として使用できる個数を十分数確保するのは財政的にも非現実的なものとなります(繰り返しますが、「戦争として戦略的に行う」ということを前提としており、一か八かでテロのように攻撃する可能性がないという話ではありません)






例えば、湾岸戦争では、イスラエルは同国最大の都市テルアビブへの着弾も含め、約40発のミサイルを受けておりますが、直接の死者2名、負傷者200名強というように、軽い被害ではないものの、国家に大打撃を与えるほどの影響があるかというと、通常弾頭だけではそこまで大きな力を持たないことが分かります。(出典:総務省消防庁資料






余談ですが、ミサイル発射の際に「できるだけ近くの建物に逃げ込んで、窓から離れて頭部をかばって伏せましょう」と言われているのは正しく、通常弾頭に対しては、近代的な建造物であれば、「よほど爆心地の近くでない限り、建物が崩壊する可能性は高くない」と言え、ある程度爆心地から離れると一番危険なのは破片によるものなので、窓から離れて頭部をかぶって伏せるというのも合理的な避難方法と考えられます。核兵器についても、爆心地の近くであればどうしようもありませんが、ある程度離れた場所になれば、こうした避難で助かる可能性は上がります。






このように、北朝鮮にとってアメリカに攻撃を行うのは、海軍・空軍では困難、核兵器単独でもミサイル単独でも難しいことから、現実的には「核ミサイル」という路線しかなくなっております。






一方で、このことはアメリカ側も認識しており、「核実験」や「ICBM」に対してアメリカが強い反応を返し、それ以外のミサイルについてはそこまで強硬な態度を取らないのはそのためで、アメリカにとっても恐ろしいのは「アメリカに届く核ミサイル」であると認識しております。






ちなみに、このことは対日本でも同様のことが言えて、日本が「北朝鮮のミサイル」を恐れるのは、それが現時点で一番現実的な「戦争を仕掛けられるリスク」と言えるからです。






今回のミサイル発射がどういう意味を持つのか(12/5追記)








それでは、こうした前提を置いた上で今回のミサイル発射を振り返ると、何故アメリカが今までにないくらいに大きな反応を返しているのかということが分かります。






まず、今年の9月3日には北朝鮮で核実験が行われ、そこでは「ICBM用の水爆が完成した」と発表されました。






北朝鮮からすると、この核実験は、実験としての意味以上に、「実際に非常に強力な核兵器を持っている」ということを対外的に示すことができ、その一方で、どこかに対して攻撃したわけでもないため、これ自体を先制攻撃の口実にすることは難しいというように、危険な賭けではありますが、対外的な影響力を向上させる一手として考えたものだと推測されます。






その上で、今回の11月29日のミサイル実験がありました。






今回のミサイルは、北朝鮮の発表によると「アメリカ本土全域を範囲とした」ものであり、これはつまりアメリカにとって最も恐るべき、「アメリカ本土に届くミサイル+核弾頭」が完成してしまったということであります。






今回のミサイルについては、大気圏への再突入の際に分解してしまった(=実際にミサイルを兵器として使う場合には機能しない可能性がある)という報道もあり(NHK 12/4)、北朝鮮のミサイルが完璧に完成したというわけではないかもしれませんが、それでもアメリカにとって北朝鮮の脅威が非常に高まっており、「時間がない」と考えるようになってきております。






では、次にこのことを踏まえ、今後戦争になる可能性がどの程度あるかを考えたいと思います。






今回のミサイル発射から戦争につながるリスクはあるか








では、次に戦争が起こるかどうかを考えたいと思います。






結論としては、これまでと違い、本当に戦争に突入する可能性が現実的になっていると考えております。(これまでは「合理的に考える限り短期的に戦争に入る可能性は高くないが、中長期ではあるとしておりましたが、昨今の事情を踏まえて、リスクをより高く考えます)





これまでアメリカが何故北朝鮮を攻撃しなかったかと言うと、最終的に戦争をしたら負けることはないものの、国境線付近にあるソウルが大打撃を受けたり、ミサイルで日本や韓国が被害を受ける可能性があり、さらには戦争には多額のコストがかかる(クリントン大統領時代の試算では、「開戦90日間で5万2千人の米軍が被害を受ける、韓国軍は49万人の死者を出す、戦争費用は610億ドルを超える。最終的に戦費は1千億ドルを越す」とも言われました(出典:辺真一 2017年)こと、イラク戦争や湾岸戦争等で反戦運動が高まったことからも、基本的には戦争を望んでおりませんでした。






北朝鮮はよく「ソウルを火の海に」という表現を使いますが、これは誇張ではなく可能なことで、というのも、国境線からソウルまでは陸続きでわずか30km程度(東京と横浜くらいの距離)であり、北朝鮮が攻撃しようと思えば、「ソウルを火の海に」すること自体は可能で、ただ、その後反撃を食らうということも踏まえた結果攻撃していないという状態です。






しかし、それは「アメリカにとって北朝鮮の脅威が他人事」であった際にはそうした理性的判断を行っていたという話で、今回のように「このままいくと近いうちにアメリカに対して脅威となる」という事態になった時に、どう判断するかと言うと、「本当にどうしようもなくなる前に潰しておかないと危険だ」と判断して、戦争となる可能性は高まっていると考えております。






実際に、米韓合同訓練でも、レーダーで捉えられず北朝鮮の防空網を突破可能なF22が6機同時に韓国に入り、24時間の作戦継続や精密攻撃が盛り込まれている等、アメリカのかつてない「本気度」がうかがわれるものとなっております。(出典:産経ニュース12/4






こうしたことから、北朝鮮が挑発行動を続ける場合、アメリカとの戦争の可能性はかなり高まっていると考えられます。






もう一方の北朝鮮としては、今回については折れて何らかの譲歩を行う可能性もありますが、今後も「武力を持たなければ攻撃される」という考え自体は残るため、仮に今回戦争が回避されたとしても、北朝鮮がミサイルや核開発をここでやめるとは考えづらく、そうした技術が高まった時には再び「アメリカにとっての脅威」となり、今回のように戦争リスクが高まることとなると考えられます。






したがって、短期的にもリスクが高まっており、仮に今回戦争が避けられたとしても中長期的には戦争が起こるリスクは考えておく必要があると考えております。






戦争になったとして日本への被害はどうなるか








では、仮に戦争が起こったとして、どのようなことになるのかということを考えたいと思います。






前提としては、軍事技術や経済状況・国際情勢等が現時点からそこまで大きく変わらないことを想定しておりますので、そこはご了承ください。






まず、戦争になった場合、被害を受けるのは北朝鮮と韓国が一番大きくなると考えられます。これは、上でも書いたように、海を挟んだアメリカや日本に攻撃するのは、特殊部隊によるテロ、ミサイルくらいであるのに対し、韓国に対しては、陸続きであるため、北朝鮮にとっての一番大きな戦力である陸軍を大きく投入できることが理由です。






中国やロシアが介入するとしても、名目としては「北朝鮮の支援」となると考えられるため、それこそ日米と全面戦争を起こそうという意図でもなければ、国境線付近や北朝鮮領内での戦闘が主と考えられます(逆に全面戦争だとすると、第三次世界大戦となり、その可能性もゼロとは言えませんが、現実的には低いものと考えられます)






日本への被害という点で考えると、特殊部隊によるテロや、米軍基地付近へのミサイル、世界的なリスクオフによる経済への影響が考えられます。






日本では戦争というと第二次世界大戦や中東でのアメリカの戦争のように、「空襲」「都心部への爆撃」「上陸しての戦闘」等をイメージする人が多いですが、現実的には北朝鮮空軍が日本本土に継続的に爆撃を加えることも、上陸して戦闘員が乗り込むことも困難であり、テロや基地周辺への攻撃となる可能性が高いと考えられます。






また、都心部にミサイルを落とすというのも、ミサイルの数に限りがある中で実際に攻撃してくる相手への迎撃としても必要なこと、基地を狙って攻撃しようにも「ピンポイントに基地に一発で当てる」ということは不可能であり基地を狙うにしても複数発打つ必要があること、また、国際世論としても「攻撃してくる基地への攻撃」と「民間人しかいない都心部への攻撃」では与える印象が全く違うことから、都心部で核ミサイルが落とされたらというのは、そこまで可能性として高くないと考えております。






これを言うと「とはいえ可能性はあるだろう」と言われ、それはもちろんその通りですし、だから国防の観点で政治家等が考える場合には絶対に検討しなければいけない事項ではありますが、可能性の高低という点で言うと、むしろ30年以内に70%以上の可能性で起こると言われている首都直下型巨大地震等の方がよりリスクとしては高いと考えております。






ですので、仮に万一戦争が起こったとしても、その時点で「皆死ぬ」というわけではなく、冷静に対応すること(テロが起こっていそうで危険な場所では急いで立ち去る、ミサイルの発射警告があれば建造物に逃げて窓から離れて伏せる、災害対策も含めて備蓄を用意しておく等)が重要だと考えております。






北朝鮮情勢による為替への影響の予想








最後に、為替への影響という点で北朝鮮情勢を考えたいと思います。






結論から言うと、北朝鮮情勢が悪化した場合にはリスクオフの円高、好転した場合にはリスクオンの円安ということで、通常通りの想定で問題ないかと思います。






これについては、例えば東日本大震災で、日本自体が大きなリスクを持った時でも、一瞬円安に振れても最終的に円高圧力の方が大きく、協調介入が行われるまでは戦後最高値を付けたことからも、「日本も危険だから円安になるのではないか」というよりは、円高になる可能性の方が高いと考えられます。






また、上で書いたように、万一戦争に突入したとしても、日本に東日本大震災以上の大打撃を与えるほどの被害が出る可能性は低く、「リスクオフ」の要素としてはかなり強いものの、例外として「リスクオフでも円安」ということになる可能性は低いと考えております。






よって、北朝鮮情勢が為替に与える影響は、悪化した場合リスクオフの円高、好転した場合にはリスクオンの円安ということになるかと思います。






ただし、上で書いたように、アメリカ側も北朝鮮側も「戦争をしたい」という意図はないため、何かが起こったとしても、短期的には動いてもすぐに落ち着きを取り戻すという展開が多いと考えられるため、「ロスカットを入れての逆張り」という方法も良いのではないかと思います。






以上が北朝鮮情勢の分析です。






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