2018年12月02日 22:41

日本時間で12月2日の早朝、G20にあわせて実施された米中首脳会談で、来年1月に発動が予定されていた関税25%への引き上げ措置を見送ることが決定されました。
これについて、
トランプ大統領「両国の無限の可能性を引き出すことができるすばらしく生産的な会合だった。習近平国家主席と協議ができて光栄に思う」
王受文次官(中国商務省で貿易問題などを担当する人)「アメリカ政府は当初、来月1日以降、中国からの総額2000億ドルの輸出品に上乗せしている関税を10%から25%に引き上げるとしていたが、それをやめることを決めた。来月1日以降も、税率は10%のままだ」
「中国とアメリカは、新たな品目を対象に関税を引き上げることをせず、現在25%となっている上乗せ関税についてもなくす方向で協議を続けることで合意した」
出典:米 来年1月の対中関税引き上げを一時見送り 米中首脳会談受け(NHKニュース)
というように、両者とも「成果」をアピールしております(当たり前と言えば当たり前なのですが・・・・・)
ただし、この凍結については、あくまでも90日間の「一時見送り」に過ぎず、今後知的財産権の侵害、外国企業に対しての技術移転の強要、サイバー攻撃、サービスや農業分野での市場開放等の論点で今後合意が取れなければ、関税の引き上げが行われるとされております。
米国側の発表では、発動猶予は中国の構造改革が条件としている。(1)米企業への技術移転の強要(2)知的財産権の保護(3)非関税障壁(4)サイバー攻撃(5)サービスと農業の市場開放――の5分野で協議し、90日以内に結論を得るとした。それまでに合意できなければ、2000億ドル分の関税は10%から25%に引き上げる。
米、中国への追加関税を90日猶予 首脳会談で合意(日経新聞)
これについてどう解釈すべきかというと、
というのが妥当だと考えており、要は「当面の先送り」には成功した、くらいに見ておくのが妥当だと考えております。
では、今後中国がこうした問題に対応しきれるかというと、今時点の見通しでは「困難ではないか」という声が多く、例えば
米通商代表部(USTR)のウェンディ・カトラー元次席代表代行は、
今後の道のりは厳しいものになるだろう。技術の強制移転や知的財産の保護、サイバー攻撃による技術の盗み出しといった複雑な問題について3カ月で合意するのは、米中がどれほど決意を持って臨むかに関わらず、ものすごく困難だ。
と述べ、
米戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ケネディ中国研究副部長も、
米中は非常に限定的な合意に達しただけだ。大きな問題については意見の隔たりがかなりあるため、広範な合意に達することはできなかった。米中が交渉で合意に達しなければ関税は25%に引き上げられる。これは3月の中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開幕直前となるため、貿易戦争の再開は習近平(シー・ジンピン)国家主席にとっては特に恥ずかしいものになり得る。(中略)中国は産業政策で大きな譲歩をしなければいけないが、そのような譲歩をする確率はかなり低い。今回の米中首脳会談は米中関係の悪化のペースを遅らせるかもしれないが、悪化の方向を変えることはない。
と述べているように、「単なる先送り」という見通しが多いです。(出典:米中合意、識者に聞く 元米高官「90日では解決困難」 (日経新聞)
海外メディアも、例えば
英国放送協会(BBC、電子版)は関税の一時猶予について「貿易戦争の一時停止ではなく、貿易戦争の激化の一時停止だ」と分析。トランプ政権は中国にさらなる市場開放などの構造改革を求めているが、「米政権を満足させて貿易戦争を完全に終わらせるためには、中国政府の市場開放に対する取り組みには大きな疑念が残っている」と指摘した。
米CNBC(電子版)は(中略)「米中は貿易や安全保障、イデオロギーなどでグローバルな優位性を競っている。トランプ氏が要求する(知的財産権などの)構造改革で習近平政権が交渉のテーブルにつくことはないだろう」との意見を掲載した。
というように、冷めた目線で報道しているのが多くあるようです(出典:「米中貿易戦争、難題多く」海外メディアが報道(日経新聞))
その上で、来週の相場を予想すると、私の予想としては、
と考えており、米中一時停戦でリスクオンになるという見通しで何かを買うのは、少なくとも月曜のNY時間(=月曜夜中~火曜の早朝)までは様子を見てからにした方がいいと思っております。
その理由としては、
と考えているためです。
前者についは上で書いたように、「結局90日間の猶予で、そこで合意が取れるかは今怪しく、海外でもそのように見られている」」ということですが、後者の既に織り込み済みというのは、中国の影響を受けやすい豪ドルやNZドルが、11月の時点で、かなり底堅く推移していたことから、そのリスクを感じております。
【豪ドル円 日足チャート】

【NZドル円 日足チャート】

このように、どちらも11月は21日移動平均線をサポートとして堅調に推移し、現在もボリンジャーバンドの2σ近辺にあるというように、かなり強い値動きとなっております。
市場が今回の米中首脳会談で、仮に全面対決になる可能性を予想していたのであれば、ここまで底堅い動きをすることはなく、上がるにしてももっと大きく動いたと考えられ、今回の「見送り」くらいであれば、織り込まれていた可能性もあると思っております。
実際に、11/30には、日経新聞の報道で
30日の日経平均株価は6日続伸した。週末の米中首脳会談を控え様子見ムードが強かったが、米中の貿易戦争をめぐり新たな協議の枠組みで合意できるとの期待が浮上。短期筋を中心とした海外投資家の買いが入った。というようなものもあり、このくらいであれば、ある程度織り込まれていた可能性があります(出典:「米中」に抱く淡い期待 海外勢、内需から成長株へ )
こうしたことから、今回の合意があっても、そこまで買いが入らず、伸び悩む可能性はあると思っております。
これは、初日の月曜時点では判断が難しく、というのも、月曜であれば、11月の頭くらいにショートポジションを持って買い戻し損ねて捕まった人も一定数いると考えられ(管理人自身も、若干そんな感じになってますw)、そうした人たちが今回の合意を受けて、損切で買い戻す可能性もあることから、週の前半は上昇し、その後損切の流れが終わって、買いを持っていた人の利確等も入って下落、というパターンもありえるためです。
そのため、来週の相場は、前半はまず様子見でポジションは少なめにとることを個人的にはおすすめします。
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